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フィレンツェ近郊の町で開催される夏のロックフェス、ピストイアブルース!...のお供に、Gelateria Voronoi by MANI ジェラテリア・ヴォロノイ by マニ

一千村の国として知られたイタリアは、
どこに行ってもすばらしい景色や、
長い歴史の建物・作品が観られるという定評がある。
確かにどこの小さな村にも、どんな離れた田舎にでも、
例えば歴史上有名な人が泊まった宿があるとか、
ルネッサンスのアーティストが作った彫刻や
フレスコが観られるとか、また見た目はそこそこでも、
実は由緒ある立派な教会だとか、
古代ローマからの陶器のかけらや硬貨ぐらいはあるわけだ。

とはいっても、外国からくる観光客は
そんなしょぼいものを観るために、
わざわざアクセスの不便な辺鄙な田舎まで
行くことはしないだろう。
特に休暇の少ない日本人の方々は
せっかくだからベネチア、フィレンツェ、ローマなどの
メインな観光地ばかりを観てしまう。
貴重な休暇の使い方、
確かにそれは正しい判断だ…と認めながらも、
今回そのようなしょぼい町を紹介したいと思う。
しかも、このドクターエドのジェラート三昧では
初めてのナイト撮影!そこにはもちろん、
ジェラートテイスティングも入って、
また新しい食べ方と営業の仕方を紹介します!



さて、イタリア好きな皆さん、
トスカーナ州を形成する十県の中で
ピストイア県という町があったと、ご存知でしたか?
フィレンツェ人からみると、
海へ行く高速道路の途中にそういえばそんな町あったなぁ、
というような薄い存在で、
日本の某有名ガイドブックにも紹介文が
2行ぐらい与えられるかどうかという寂しい定めの町だ。
フィレンツェに在住している日本人は
4千人ぐらいだとされているが、
ピストイアに住んでいる日本人は
たったの20人ぐらいだそうだ。
なんて人気の無い町なんだ!

でもそんな扱いをされているピストイアだって、
ガイドブックの説明にこそ満たないが、
なんらかの魅力が実際にある。
まず、フィレンツェやローマや他の観光町と違って、
旧市街の道を歩いても外国語は全く聞こえない、
外国人観光客は見当たらない。
耳にするのは田舎訛りのトスカーナ弁だけだ。
それに、先ほど言った通り、
そこそこ立派な大聖堂や宮殿があるんだ。
そして、再開発の手があまり回らない田舎の町らしく、
中世町の街並みがまだ姿をしっかり残している。

でも皆さんが驚くところはこの次だ。
イタリア人にピストイアと言えば
何を連想するかと質問してみよう。
おそらく10人中9人は間違いなく
BLUESブルース」と答えるであろう。
なぜブルース?
実はピストイアには1980年から毎年続く音楽の祭典、
そう、夏フェスがある。
その名もずばり「ピストイア・ブルース・フェスティバル」。
夏の音楽フェス、ピストイアブルースフェスティバル
田舎の町だからって軽蔑するもんじゃない。
過去には世界音楽のブルースだけではなく、
フォークやロック音楽のレジェンドB.B. King
Muddy WatersJohn Lee HookerSteve Ray Vaughan
Chuck BerryFrank Zappa、そしてまさかのBob Dylanまで
ピストイアのステージに登ったことがあるのだ。
写真の通り、今年のプログラムには
Carlos SantanaStingという大御所のアーティストが出演する。
こんな小さな町でこんな大きな規模のイベントができるのかって?
それこそが魅力的なギャップを作るのだ。
実のところ、町が小さいからこそ
このようなイベントに全力を注ぎ、成功できるのかもしれない。
この「ピストイア・ブルース」の特徴は、
普通の夏フェスと違って、
野原や山の中を会場として備えるのではなく、
町のど真ん中にある一番の観光スポット、
ドゥオモ広場を大胆不敵にも全て封鎖し、
巨大な特設ステージ作り上げてしまうのだ。
ドゥオモ広場を大胆にもロックコンサート会場に
このイベントを知らず、
純粋にピストイア観光をしようと来た人がいたなら
少しガッカリするかもしれないが、
この期間はピストイアの一味違った
一面を垣間見ることができる。



夜は夜店が立ち並び、そこかしこから音楽が聴こえ、
町の人も夜のそぞろ歩きを楽しむ。
日本で言えば縁日やお祭りのような
ちょっとワクワクする雰囲気だ。
夜も町のあちらこちらから音楽が聞こえる
そして実は、チケットがなくても横の路地裏に入ると、
ステージは見えないが、音が割とはっきり聞こえるんだ。


そのような路地裏に入ってみたドクターエドが
ジェラート・レーダーをONにしたら…やっぱり!
ジェラート屋さん発見!というのは嘘で、
実は最近できた美味しいジェラテリアの噂を
聞いていたのでした。
しかも、美味しいだけではなく、
イタリアではまだ少ないフランチャイズ式の会社で、
すでに首都のローマに2店舗をオープンしたとのこと。
その名称はMANIマニ。


創立者はピストイア出身の友達二人で、
一人はシェフのマッシモさん。
主にジェラート生産を手がける。
もう一人のニコラさんはマーケティング担当で
材料の仕入れなどを担当している。

以前インタビューしたジェラート職人は、
自分で野菜を育てるのが自慢ポイントだったが、
このマニのふたりは「私たち農業のプロではないから、
その仕事を専門者に任せて、
イタリア中の最適な材料を宣言することに
全力を注ぎます」と。確かに、それも一理ある。
もちろんこちらの店もスロー・フード連合の
メーカーの材料を使用したり、
ピストイア県にあるアペニン山脈の
新鮮なベリーなどを使っている。
フランチャイズだけあって、
本店のマニでジェラートのベースを作り、
他の店舗に冷凍車に変身したクラッシックカーで配達。
その後各店舗でそのベースを元に冷やし、
混ぜるなどの最終的仕上げを任せる。
この整備貫徹された過程によって、
マニのこだわりの味を保証できるらしい。
さて、今日のライブは予定より一時間ぐらい遅く始まったので、
会場であるドゥオモ広場のすぐそばにある、
マニのジェラートを扱っている店舗、
ジェラテリア・ヴォロノイを訪ねる。
小洒落た店で、去年出来たばかりだが、
すでにピストイアの人に愛されているようだ。


ライブのせいでもあろうが、結構並んでいる。
だいたい13〜14世紀ぐらいの小さな建物。




中には幅2メートルぐらいのカウンターのとなりに
laboratorio」(工房)とかいてある狭いスペースがあって、
あそこでマンテカトーレ(ジェラート用のフリーザー)が並んでいる。

カウンターの向こうにいるイタリアン美女が二人
一生懸命サービスしながら僕の質問に答えてくれる。


「ライブがある日は夜1時か2時までやってますよ」。
少し疲れた顔でエレナさんがいう。
ヴォロノイというのはもともと近くの広場にある
ビストロ・レストランであるが、
2年前このマニというフランチャイズに参加して、
なかなかビジネスが上手くいっているそうだ。
ライブのゲートで警備している警察さん二人も
休憩中にジェラートを買いに来た
休憩中のお巡りさんもついついジェラートを買い食い
(残念ながら写真にはノーと言われた。
だから後ろから隠し撮り)。
揃っている味は12種、
その中だいたい2、3種類ぐらい日替わりにしている。
本店のマニにその日の在庫を聞いて、
それによってメニューを決めるそうだ。


さっそく他のジェラテリアで
見たことのない味を注文する。
松の実味とセージ味。
フィレンツェではセージ&レモンという
ジェラートがあったけど、セージのみは初めて。



ミルクベースなのに結構さっぱりし、
セージの葉っぱをちょっとなめている感じする。
松の実はクリーミーでコクがある。
しっかりした味わいだ。


他の人気の味はホワイトミントとピスタチオらしい。
もっと珍しい味かメニューか何かありませんか?
と聞いたところ、エレナさんは
「それはブリオッシュ・ジェラートですよ!」。
と答えてくれた。ブリオッシュか…


シチリアから出来立てを真空パックで送られてくる特注ブリオッシュ
日本のテレビなどではよく紹介されているのを見かけるが、
イタリア人のジェラートハンターである僕も、
実はあまり好まない…。
こういう食べ方を提供する店は結構あるけれど、
だいたいぱっさぱっさのブリオッシュで
あまり美味しいのに当たったことがないんですが…」
するとエレナさんは笑顔で説明してくれた。
「それなら是非食べてみてください。
きっとイメージが変わりますよ。
うちのブリオッシュはシチリアのケーキ屋さんで、
ジェラート用に特別作られているんです。
それを真空パックで送ってもらっています。
オーダーが入ったら開けるのですが、
いつもパックを開ける瞬間はふんわりとした
卵とバターの香りで、まるでシチリアのケーキ屋さんに
いるみたいなんですよ」。
メニューを見ると、ジェラート無しで
ブリオッシュのみで買うこともできるらしい。
結構自身がある商品なのでしょう。



よっし、それならば、とピスタチオと
イチゴのジェラートでお願いする。





たしかにふわふわのパンである。
しかも結構大きい。
手にした瞬間からやさしい甘い匂いに惹かれる。
ガブッと噛んでみた。
ふわふわ、柔らかくてちょっともちもち。
卵、バターの香り、甘みの中に少しの塩味。
そのあとにアイスの冷たさと甘さがやって来て、
口がちょっとびっくりする。
まるで焼きたてのような香りのするブリオッシュに苺とピスタチオのジェラートを挟んでもらう

よく考えると、ジェラートは凍っている状態なので、
香りはそこまで発生していないが、
ブリオッシュは常温であるのに焼きたてのような香りがする。
「いいバランスだな!」
普段こういうアイス・ケーキがあまり好きではないが、
これはなかなかイケているマッチだ。
パンとアイス。微妙な響きかもしれないが、
似た味を僕は知っています。
日本人に説明するために表現するならば、そう、
ほんの少しだがシューアイスに近い。
いや、しかし南イタリアのブリオッシュは
またやはり違う深さがもっていると思う。
爽やかな地中海の風のおかげでしょう。

メニューには他にもクレープやケーキ、
フラッペなどのミルクシェイク。
店が10平米ぐらいなのに商品数が豊か。
もちろん、店内でお召し上がりいただける
スペースはございません。
アイスを買って外に出て、
道で歩き食いするのがイタリアンスタイル。

店を出てうろうろしながら、
やっぱりイタリアでもジェラート企業が
進化しているなぁと独り言。
一つの店舗だけに命をかける職人がまだいっぱいいる中で、
味を保証しながらもっと現代的なビジネスを広げようとする
新しい会社がだんだんでてきた。
それでも、世界中に溢れる「アイスクリーム」ではなく、
「ジェラート」として認証されつつあるこの食べ物は、
このイタリアのしょぼい田舎の町からだからこそ
素朴な力をもって発達しているのかもしれない。

と考えると、すでにライブが終わりそうになって、
なぜか封鎖されていたゲートが開けられ、
チケット無しでもステージまで行けるようになっていた。
今日のバンドはカウンティング・クローズという
アメリカのロックバンドで、
最後の2曲をタダで聴かせていただいた。
謎のシステムであるがありがたい。
アメリカのロックバンド、カウンティングクロウ
音質やステージはさすが夏フェスレベルで、
しかも何百年前の大聖堂を背景にして、
なかなか日本ではみられない光景にカルチャーショック!
しかも、まだ口にジェラートの味が残ったまま鑑賞。
これはまさに文字通りの
「アイス・オン・ザ・ロック」ではありませんか?!




Gelateria Voronoi by MANI 
ジェラテリア・ヴォロノイ by マニ
Via Roma, 2 Pistoia 
電話 0573 172 4433
営業時間:11:00 – 00:00 

値段:
small 2,00ユーロ
medium 2,50ユーロ
large 3,00ユーロ
extra large 4,00ユーロ